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新型コロナウイルスに打ち勝つための独り言

「新型コロナウイルスに打ち勝つための独り言」PDF版

~彼(新型コロナ)を知り、己(自分の状況)を知れば百戦殆からず~

令和2年12月4日

保原 幸夫

ダイアモンドプリンセス号乗客の感染に端を発した日本国内における新型コロナウイルス騒動は、それから10ヶ月経った現在でも収束するどころか、またまた感染拡大(?)の傾向を見せています。ここで感染拡大(?)と記したのは、感染状況の主な指標が”PCR検査の新規陽性者数”であり、PCR検査数、サンプリング方法等によって大いに影響を受ける数字だと考えるからです。

この問題が勃発した当初、自分の身を守るためには新型コロナウイルスの何たるかを知らなければと思っていたところ、諏訪中央病院・玉井先生の「新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書」に出会いました。漫画入りで、”予防のために心がけること”、 ”もし感染したらどうなるのか”、”何らかの症状があった時に心がけること”、”お年寄りや病気がある人が家庭内にいる場合心がけること”などが適切にわかりやすく説明してありました。
そして、私が注目したのは次のような数字でした。

  • 基本再生産数(RO)は2~2.5だけど、
  • 感染した人が100人いたら、
    他人に感染させるのは20人で、80人は誰にも感染させない。
    重症になるのは20人で、80人は軽症ですみ2週間ぐらいで治る。
    重症者のうちICU管理が必要なのは5人、人口呼吸器が必要なのは2.3人。
    ECMOが必要なのは0.5人で、死亡に至るのは2.3人。
  • 濃厚接触しても1~5%しか感染しない。

これは、とりもなおさず重症化リスクの高い人に感染させないようにさえすればそれ以外の人は感染しても大丈夫なので、やみくもに恐れる必要もないことを言っているのだなと受け止めました。それからは、この数字の妥当性を確かめるためにもいろいろと発表されるデータを私なりに分析することが楽しみにもなってきました。

特に私が注目したのは、濃厚接触しても感染しない人が95%もいるという点でした。マスコミを通じて報道されるのは新規感染者数や重症化した人のことばかりですので、すごく多くの人が感染しているという印象を受けますが、私の知人・友人はさることながら、その知人・友人まで範囲を広げても未だにPCR検査陽性の情報は得られていないのが実態です。数字的にも、12月4日時点での人口あたりの累積PCR検査陽性者数は最も多い東京都で0.3%、全国平均では0.1%ですから、なるほどとうなずけます。PCR検査の陽性率も5%以下で推移しているのではないでしょうか。


そこで、感染しない人はどんな人なのかを調べることは自分が感染しないためのヒントになるのではないかと考えました。そして注目したのは、人間が本来持っている”免疫力”がその鍵を握っているのではないかということでした。

久留米大学医学部免疫学講座のHPに免疫についてわかりやすく説明されていたので引用してみます。

〔免疫とは?〕
新型コロナウイルス等の病原体が体に侵入してしまった場合、我々の体を守るためにウイルスを体から追い出す役割を担う仕組みが免疫です。よって、免疫力が強いと症状が出ないままウイルスを追い出し、症状が出ても軽症で済みます。
一方、免疫力が弱いと重症化や最悪の場合は死にも至ります。
未知の新型ウイルスに対しては悪戦苦闘が続いているのが現状ですが、免疫が適切に働いてくれれば、重症化し死亡には至らないようです。事実、爆発的に蔓延したアメリカでさえ、免疫力がしっかりしていれば98%以上の方は無症状か軽症で済んでいます。

〔免疫の仕組みは?〕
免疫細胞は自然免疫細胞と獲得免疫細胞に分けられます。病原体が入ってくると自然免疫細胞が数時間以内に攻撃を仕掛けます。自然免疫細胞は非常に血気盛んで、病原体を丸飲みしたり(貪食)、石(サイトカイン)を投げて相手を攻撃します。しかし、自然免疫細胞は「悪そうな相手」全てに対してむやみやたらに攻撃を仕掛けるため、効率的な攻撃とは言えません。よって、たまには暴走してしまい「サイトカインストーム」と呼ばれる病気を起こしてしまう事もあります。自然免疫細胞が戦っている間、獲得免疫細胞は自然免疫細胞から情報を得て「本当に悪い主犯」を認識して、それを覚え込み、敵を倒すための効率的な戦略をたて、主犯を記憶して戦いに参加できるようになりますが、そのためには3日間以上の準備期間が必要になります。この間は、自然免疫細胞が一人で戦うことになり、強敵や多勢の場合は苦戦してしまい我々に多くの症状が出てしまいます。準備が整うと、獲得免疫細胞の中の「B細胞」は弓矢(抗体)を使い、主犯に対し的確にピンポイントで攻撃を仕掛け、自然免疫細胞は矢の刺さった主犯を的確に攻撃できるようになります。また、B細胞は、ウイルスの増殖を抑えることができる特殊な矢(中和抗体)も放ち、敵の援軍を阻止します。同時に、獲得免疫細胞の中の「T細胞」も参戦してきます。T細胞は特殊部隊のような戦闘のエキスパートであり、至近距離から拳銃(サイトカイン)を使い的確に敵をしとめると共に、ナイフ(パーフォリン)を使った接近戦にも長けており、B細胞に対して抗体産生の指示や援護も行います。このチームプレイにより病原体は撃退され症状が急激に改善します。このように、免疫力は最強の抗ウイルス薬と言えるのです。


しかし、免疫はウイルスが体内に入らないようにする役割は担っていませんので、いわゆる感染防止の手助けにはならないのではという疑問が生じました。

そこで、感染の定義について考えることにしました。厳密に言えば、極めて少量のウイルスが瞬間的に入っただけでも感染したことになりますが、取り込まれたウイルス量が規定量に達していなければ感染したとは言わないそうで、この量はウイルスの種類ごとに決まっているとのことです。したがって、仮に濃厚接触したとしても取り込まれたウイルス量が規定量に達していなければ感染したことにはならないのです。さらに、PCR検査陽性になるのは発症してからであり、その感度はせいぜい59~70%ぐらいだということですので、感染拡大状況をPCR検査の新規陽性者数のみで判断するのはいささか疑問が残ります。


ここまでの説明で、賢明な皆さんは、感染者数を推定することの難しさに気がつかれたのではないでしょうか?感染者数を特定することに意味があるかどうかはともかくとして、どうしても推定したいとしたらどうするかを考えてみましょう。もっとも妥当だと考えられるのは、抗体検査陽性率から推算する方法です。感染した場合に獲得免疫細胞の中の「B細胞」が産生するIgG抗体の有無を検査する抗体検査の陽性率に基づいて推算しますが、検査対象や検体数の影響でその数値には大きなばらつきがあるのが現状です。全世界でみると15%という高い陽性率のところもありますが、日本ではせいぜい0.5%でした。単純に計算しても全国では63万5千人、東京都では6万5千人は感染することになります。12月2日時点で、全国の感染者数は15万4111人、東京都は4万1811人と発表されていますから、抗体検査の感度を考慮すると妥当な数字と言えますが、たとえ感染したとしても無症状のまま回復した人はPCR検査を受けないため感染者としてはカウントされていないように思われます。
それよりも、こんな不確かな数字に右往左往するのではなく、一人一人が感染しないためには、というよりはむしろ感染しても重症化しないためにはどうしたら良いかを考えるかが大切になってくるのではないでしょうか。
私が言いたいことは、これまで実践している「3密回避」と「消毒励行」に加えて、「免疫力の維持・強化」に努めましょうということです。言い換えれば、前者はウイルスを取り込まないように逃げましょうということですが、後者は仮にウイルスが入ってきても撃破できるように準備しましょうということです。
そのキーワードは、「栄養」、「休養」、「適度の運動」だと考えています。
ただし、既に何らかの原因で免疫力が低下している人はひたすら逃げるしかありませんし、周囲の人は保護してやらなくてはいけない事は言うまでもありません。
コロナ制圧タスクフォースのレポートでは、高血圧、糖尿病、悪性腫瘍、慢性腎不全、慢性肺疾患、心血管疾患などの持病がある方は勿論のこと、喫煙習慣がある人、肥満(BMI>40)の人や高齢者がこれに該当すると言われています。


東京オリンピックを開催するためにはどうするかといった議論がなされていますが、そのためにはまずは選手の感染防止策をということになると思います。最悪、無観客でやれば良いわけですから。その実証実験も兼ねてか、プロスポーツの試合やエリートアスリートによる大会を徐々に通常に戻そうとしていることは衆知の通りです。ここで私が注目しているのは、感染リスクを高める要因のうち喫煙習慣の影響についてです。エリートスポーツ選手は一般の人よりは免疫力を維持できているので、無症状か軽症で済んではいるのですが、感染している人は喫煙習慣があったのではないかと思える節があるからです。

私の独断と偏見かも知れませんが、試合中にしっかりと休みが取れるスポーツの選手だけが感染しているように思えます。その代表は野球、そして、チームスポーツであるバスケット、サッカー、ラグビーなどなどです。それぞれの試合をじっくり見てみると分かりますが、相当の時間止まって休んでいます。これらの競技は瞬発力と優れた技術があれば、多少心肺機能が劣っていても一流選手になれるのです。その対極にあるのが、陸上競技の長距離選手です。競技中に休む事など考えられませんので、心肺能力を損ねる喫煙などは考えられません。未だに感染者は見つかっていません。プロ野球の球団が、感染防止対策として選手に対する禁煙指示を発表していたことは、喫煙者がいたことを示しているのではないでしょうか。

コロナ制圧タスクフォースメンバーである公立陶生病院の武藤先生は「新型コロナウイルスのNow!!」の中でこんなことを言っています。
”皆さんは新宿の劇場で、ナイトクラブで、スポーツジムで、カラオケで。「そんな3密の所に行くから感染するんだ!」って言いますね。その通り。感染リスクは高い。でも、大事なのは「そこにウイルスを持っている人がいたから感染した」なのです。まるで、上記のような騒ぐ人が集まる空間には無からウイルスが集まるかのような報道の仕方に違和感はありませんか??”と。
ウイルスを持っている人がいるかどうかの判断要素の一つとして、喫煙者が集まる場所であるかどうかを加えてはいかがでしょうか?勿論、ご自身が感染しないためにも喫煙による感染リスクを見つめ直してはいかがでしょうか?

冒頭で紹介した「新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書」では

  • 濃厚接触しても1~5%しか感染しない
  • 仮に感染しても、元気な子供~健康な成人の99.8%は治るが、80歳以上の高齢者は5人に1人は死亡するリスクがある

と言っていますが、これらのことは我々が生まれつき備えている免疫力で説明できるのではと考えています。我々は本来十分な免疫力を備えていたのに、年齢を重ねるにつれていろいろな原因で低下させてしまっているのではないでしょうか。
両親から授かった免疫力に感謝しつつ、免疫力を維持する努力を継続する事こそが感染防止策の秘訣なのではないでしょうか。


最後に、久留米大学医学部免疫学講座HPに記載されているまとめの抜粋を下記しますので、参考にして頂ければと思います。

  1. 死亡者数からみて、新型コロナウイルスは日本人にとって、基礎疾患のない49歳以下方では季節性インフルエンザより怖くなく、高齢者では誤嚥性肺炎よりも怖くないと思います。
  2. 免疫学的に見て、新型コロナウイルスは「先鋒」である自然免疫でも対処できる「弱い敵」であると思います。
  3. ただし、弱いながら免疫軍の目を盗み「血栓」を起こす「テロウイルス」であると考えられます。血栓症を起こしやすい方は注意が必要で、日頃から血栓予防に注意する必要があるかもしれません。特に、食欲がなくなったり、熱が出たときは十分な水分補給が必要です。
  4. 新型コロナウイルスは弱いため、高齢者でも約4割の方は無症状です。
    一方、高齢者では獲得免疫が低下しているため、ひとたび症状が出ると約3割の方は重症化してしまいます。すなわち、高齢者施設では「知らず知らずのうちに感染を広めてしまう方」と「重症化しやすい方」が混在されている状況が推測されます。高齢者関連施設に特化した重点的検査、さらには症状が出た方への早期の治療介入が必要かもしれません。
  5. 一方、9歳未満の子供達は、新型コロナウイルスに感染しにくく、重症化も起こしにくいため、幼稚園や小学校では季節性インフルエンザに準じた対応で充分なのかもしれません。
  6. 感染拡大防止には、「人にうつさないための思いやりマスク」が重要です。ただし、マスク着用による健康被害も懸念されるため、他人に接しない所では、マスクを外す習慣が必要と思います。
  7. 風評被害による医療の萎縮、そして「本当に検査が必要な方」が検査を躊躇する悪循環を招いている可能性が危惧されます。「風評被害を起こさない環境作り」が重要かもしれません。
  8. 季節性インフルエンザとの同時流行に備え、症状があれば近くのクリニックで新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの迅速検査を同時に受けられる体制が理想的と思います。

この新型コロナ騒動をきっかけに、皆さんがより一層健康管理に留意するようになれば、将来的には医療費削減につながってこの騒動で使った税金を取り戻せるのではないでしょうか。禍転じて福となすことになるのではないかと期待しています。

参考文献

新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書
新型コロナウイルスのNow!!
免疫を理解し、新型コロナウイルスを正しく恐れるために

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